読書のブログ 記録代わりに

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読書記録103(2020年36冊目) 労働争議 花見忠 著 講談社学術文庫 2020/06/28

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本書ほど、日本の労働組合の欠点を抉り出した本は他にはないのではないか。

日本の労働組合のストは嫌がらせのようなものであり、アメリカの労働組合が実施するストライキ100日とは異なる。

そして、日本の企業別労組が、その日本の労働組合の一時期までの中心であり、その組織の抑圧性は、本書には書かれていないが、学生運動中核派革マル派に引き継がれ、最終的には連合赤軍浅間山荘事件、日本赤軍のテルアビブ乱射事件に至る。

日本の労働組合運動は情緒と暴力に支配されている。その精神を学生運動は引き継いだのだ。

本書で初めて知ったが、田中角栄三木武夫官公労へ条件付きスト権を与えようとしていた。だが、官公労が政治ストをやりすぎてしまい世論を敵に回してしまい、スト権は遠のいてしまった。

とにかく、日本の労使関係は使用者のパターナリズムに包摂されてしまい、労使が対等にならずに、どうしても労働者側が、すねたような甘えたような態度で、情緒的な反発を行い、欧米のように、経済的取引の交渉ではなく、まるで、労使双方、嫌がらせのような紛争になる。アメリカではストライキは、組合の財政力もあり、綿密な計画と準備でストライキを100日以上、行われるが、日本では、組合の財政力が弱く、時限スト、部分スト、指名スト、有給を消化してのストライキなど、ストライキとして果たして有効性があるのか、ただ、使用者へ不満をぶつけているだけになってしまっているのである。日本の労働組合運動をいかに近代化へ脱皮させるかが、課題である。

だが、その課題を実現する前に、本書では書かれていないが、中曽根が国労=総評をつぶしてしまい、労働組合運動の息の根は絶える。

ちなみに、私が全労連の労働学校へ講義を聴講しに行ったとき、講師役である全労連の幹部は、ひたすら、総評をある特定政党を支持していた、と批判していたが、総評は、政党支持投票を行い、組合員が社会党を多数を占めているのに反し、日本共産党もごく少数ながら、投票をしていたものもいるのであることを本書で知ったが、それもまた、個人の人権抑圧である、と著者は一刀両断している。

本書で取り上げられた労組は、企業別労組がほとんどだが、組合員は「資本論」を読んでいないのではないか。そんなことを私は感じた。

日本の労組の再生と近代化が進むことを私は祈る。