読書のブログ 記録代わりに

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読書記録126(2020年59冊) ロビンソン漂流記 ダニエル・デフォー 著 新潮文庫 2020/11/24読了

現在、私は、ダニエル・デフォーの「ロビンソン漂流記」を読んでいるが、主人公・ロビンソンの見方は、文明を知っている者から見た、孤独な遭難者の見方である。
もともと、未開人であれば、ロビンソンのような見方はしないが、未開人は集団生活をしている。そして、ロビンソンのように、聖書を孤島で朝、晩、読み「神はあなたを見捨てない」という言葉を見つけ、安心したりもしないし、ロビンソンのように、それまでの人生で、神への感謝などをしたことがなかったことに後悔もしない。
未開人が、神という概念を脳で作り上げる進化はいつ頃なのだろうか。
採集狩猟のとき、すでに神という概念が生まれていたのか。
農耕へ移行してからか。
さらに、謎なのは、なぜ、多神教一神教が出来上がったのか。ゾロアスターでは、善と悪が戦い続けているのである、
多神教ゾロアスターのような神は演劇的だが、一神教は、絶対精神と法的である。
ちなみに、日本の八百万の神は、だらしない、というか、スケベというか、人間なんかいい加減なものだ、と神が演じて見せているようにしか見えない。だから、日本人には、法的精神がかけてしまったのかもしれないし、アバウトな連中だらけである。
ロビンソンのような見方は、日本人が孤島に遭難し、一人きりになった場合、出てこない。
八百万の神だから、感謝しようがない。
日本人は、そのまま、生き絶えるだろう。
八百万も神がいたら、どの神へ感謝し、自分の精神の拠り所にするのか。パニックになってしまうではないか。

ロビンソン・クルーソーは、絶海の孤島で、26年、他の人間とも会わずに生きている。
私は、ロビンソン漂流記は、ようやく、そこまで読んだが、まだ、フライデーが出てこない。
デフォーの文章は、客観的に事実であるかのように書いてある。もっとも、訳者の吉田健一が日本語が堪能だから、ますます、翻訳リアリズム文学の白眉と言える。吉田健一の訳は、難読困難な漢字まで使っている。私は、何度、辞書を引いたか。

あとがきに訳者の吉田健一が書いているのだが、翻訳するにあたり使用したテクストは、The Shakespeare Head Editionを使用したのだが、そのテクストを吉田健一に貸与したのが大仏次郎である、ということである。

ロビンソン漂流記に劣るともしないエピソードではないだろうか。

 

 

ロビンソン・クルーソーは、絶海の孤島でフライデーに会うまでに26年、一人で生きてきた。
自由だけはある独房囚と言える。その自由は絶海の孤島では、無駄な権利である。
フライデーは、金曜日に出会ったから、フライデーとロビンソンは名付けた。フライデーは、人喰い人種国同士の戦争で捕虜にされ、食べられる前にロビンソンは食べる者たちを射殺した。ロビンソンは、遭難した船から銃や銃弾ほか、つかえるものを島に持ち込み、節約しながら生きてきた。食事は野生の鳥肉を、火炙りにして食べる。干し葡萄が遭難した船に残っていたので、ロビンソンは干し葡萄が楽しみになった。ちなみに酒もあったので持ってきたが、飲んでいない。なぜなら、野生の動物に食われる蓋然性があるからだ。
ロビンソンは、遭難した船に聖書があったので、朝、晩、読んだ。ロビンソンは、神はあなたを見捨てない、という言葉を見つけ、生きる縁とした。
ちなみに、籠池夫妻は、拘置所内で、生長の家の初代・谷口の本を読み、生きる縁にした。
ロビンソン漂流記は、極限に置かれた人間は、何を支えに生きるか、という、アウシュビッツにも通じる文学である。
ロビンソンは、それは、遭難した船に残っていた聖書であったのだ。ロビンソンは、遭難し、絶海の孤島にまで、たどりつき、死ななかった。そして、気を取り直し、絶海の孤島で、丸木船を幾日もかけ、作り、遭難した船まで行き、できるだけ持ってきた中に聖書があった。
その聖書がロビンソンの支えとなった。
私たちは、極限に置かれたとき、何を支えにするのか。
アウシュビッツで、ガス室へ送られずに、ナチス滅亡で生き延びたユダヤ人は、二種類にわかれた。PTSDにかかった者。PTSDになっていない者。後者はレジリエンスが強いのだが、それは、アウシュビッツの中で、そのユダヤ人たちは、戦争が終われば、必ずナチスへ報復する、ヒトラーを殺す、ということを支えにして生きてきた。
人間は、極限に置かれたら、どうするか。
最終的には、精神を支える何かである。
それが、ロビンソンは聖書である。
ちなみに、ロビンソン漂流記を書いたダニエル・デフォーは、英国国教会を冷罵した論文で投獄されている。

 

 

 

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ロビンソン漂流記(新潮文庫)

ロビンソン漂流記(新潮文庫)