読書記録29 いかそう日本国憲法 奥平康弘 著 岩波ジュニア新書 2019/05/06
なぜ、自衛権さえ否定している憲法第9条がある国・日本で軍事大国化が進むのかを憲法と絡めて論じる。
本書を読んで小沢一郎がキレモノという私の評価が見事に粉砕される。
そして、またひとつ、わかったのは、「集団的自衛権」に対し、「個別的自衛権」は「合憲」という判断が現在では主流だが、「個別的自衛権」もまた、自民党政府が野党からの追及に対し、1950年代政府答弁として解釈改憲として発表された言葉であるということである。自民党政府は自衛隊を「戦力ではなく実力」と開き直っていた。
しかし、私は「個別的自衛権」もまた日本国憲法に抵触していないか、と本書を読むまで、薄々感づいていた。だが、大勢は「合憲」「専守防衛は憲法は認める」という声でいっぱいだった。私は、「専守防衛は憲法は認める」という言葉は自民党が使っていた言葉であることは知っていたので、大勢に違和感を抱き、「個別的自衛権は合憲」という声にも違和感しかなかった。
本書を読んで、僕の違和感は正しかったのだ。
そして、最初に戻るが、小沢一郎は見事に粉砕されている。
湾岸戦争当時の小沢は自衛隊を国連へ預けるから国権の発動ではないから憲法を改正しなくてよい、と主張していたが、なんのことはない、自衛隊を国連へ差し出す行為も「国権」だと小沢を批判し、そもそも小沢が唱える「国連常備軍」など存在しない、と切って捨てている。
湾岸戦争当時の「第9条論争」をよく理解できる本だ。
湾岸戦争当時、柄谷行人は湾岸戦争に反対しない者は今後の戦争も反対しないだろう、と予言していたが、実際、日本は戦争に反対できないでいる状態へ追い込まれていく。
それが先の「個別的自衛権は合憲」という主張が多くなったことだ。
そして、本書が「防衛庁が防衛省へ格上げするかもしれません」と述べているように、防衛庁は防衛省へ格上げした。
さらに、すでに小泉元首相の自衛隊イラク派兵で「実質の集団的自衛権」は行使されている現状もある。小泉はこのとき「個別的自衛権だ」といいはり、その後付け論理で官僚は「集団的自衛権」を考え、安倍首相が閣議決定した。安倍首相はアメリカが攻撃されたら同盟国の日本が攻撃する、という全く非現実なことを述べて、日本を唖然とさせた。
そう、日本は着々と戦争へ向かっている。