読書のブログ 記録代わりに

読書した本を記録代わりに感想などを含めて書いていくブログです。

読書記録104(2020年37冊目) 労働のなかの復権 熊沢誠 著 三一新書 2020/07/10

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経済成長時代の企業の暗闇を鋭くえぐりだす。
現在は、新自由主義であり、経済成長の頃は、総中流化ができていた、という現在の誤解を解く為にも必要な本である。
資本はいつでも、労働者を搾取、収奪し、特に日本は、最も資本が労働者を抑圧し、差別的に扱うことを、論じている。

マルクス主義的タームは使われていないが、資本論の労働システムとしての理論を完全に咀嚼し、本書に生命力を与えている。

 

 

労働のなかの復権 (三一新書)
 

 

 

 

読書記録103(2020年36冊目) 労働争議 花見忠 著 講談社学術文庫 2020/06/28

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本書ほど、日本の労働組合の欠点を抉り出した本は他にはないのではないか。

日本の労働組合のストは嫌がらせのようなものであり、アメリカの労働組合が実施するストライキ100日とは異なる。

そして、日本の企業別労組が、その日本の労働組合の一時期までの中心であり、その組織の抑圧性は、本書には書かれていないが、学生運動中核派革マル派に引き継がれ、最終的には連合赤軍浅間山荘事件、日本赤軍のテルアビブ乱射事件に至る。

日本の労働組合運動は情緒と暴力に支配されている。その精神を学生運動は引き継いだのだ。

本書で初めて知ったが、田中角栄三木武夫官公労へ条件付きスト権を与えようとしていた。だが、官公労が政治ストをやりすぎてしまい世論を敵に回してしまい、スト権は遠のいてしまった。

とにかく、日本の労使関係は使用者のパターナリズムに包摂されてしまい、労使が対等にならずに、どうしても労働者側が、すねたような甘えたような態度で、情緒的な反発を行い、欧米のように、経済的取引の交渉ではなく、まるで、労使双方、嫌がらせのような紛争になる。アメリカではストライキは、組合の財政力もあり、綿密な計画と準備でストライキを100日以上、行われるが、日本では、組合の財政力が弱く、時限スト、部分スト、指名スト、有給を消化してのストライキなど、ストライキとして果たして有効性があるのか、ただ、使用者へ不満をぶつけているだけになってしまっているのである。日本の労働組合運動をいかに近代化へ脱皮させるかが、課題である。

だが、その課題を実現する前に、本書では書かれていないが、中曽根が国労=総評をつぶしてしまい、労働組合運動の息の根は絶える。

ちなみに、私が全労連の労働学校へ講義を聴講しに行ったとき、講師役である全労連の幹部は、ひたすら、総評をある特定政党を支持していた、と批判していたが、総評は、政党支持投票を行い、組合員が社会党を多数を占めているのに反し、日本共産党もごく少数ながら、投票をしていたものもいるのであることを本書で知ったが、それもまた、個人の人権抑圧である、と著者は一刀両断している。

本書で取り上げられた労組は、企業別労組がほとんどだが、組合員は「資本論」を読んでいないのではないか。そんなことを私は感じた。

日本の労組の再生と近代化が進むことを私は祈る。

 

 

 

読書記録102(2020年35冊目) 労働法第三版 磯田進 著  岩波新書 2020/06/25

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徹底的に労働者側に立ち、労働組合を結成しようとしたりすると会社がいかに嫌がらせをしてくるかを、労働委員会が出した不当労働行為命令文を実例に、労働者や労働組合の権利を語る。

昭和34年発行である。

当時は、学者も労働者や労働組合の権利を重要視し、論じていたのだ。

昭和20年代ごろの労働組合活動は、ストライキとして、女性組合員がガゾリン車の前に座り込み、行くなら、私を轢き殺して行け、と怒鳴るくらい過激だったことも本書でわかる。

労働委員会のこともよくわかります。

そして、労使紛争では、国家は中立的立場に立たなければいけない、と論じています。

国家は中立的立場に立たなければいけないというのは、労働者が資本主義国家で勝ちとった権利とも述べています。

刑法とも絡めて論じていることも特徴的です。

 

労働法 (1959年) (岩波新書)

労働法 (1959年) (岩波新書)

 

 

 

 

 

読書記録101(2020年34冊目)日本社会と法  渡辺祥三・甲斐道太郎・広瀬清吾・小森田秋夫 編 岩波新書 2020/06/21

 

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本書は「現代法の学び方」「現代日本法史」「現代日本法入門」に続く4冊目であり、その4冊すべてに、渡辺祥三氏が関わっている。

 

痛みを伴う改革というようなことを言い出したのは細川護煕からだという事実が押さえられている。現状につながる政権与党多数による日本政府の政治がいかに法に対する逆支配をしていることが読んでいてわかる。
特に、ひどいのは最高裁だ。
最高裁は、まさに、法への逆支配であり、独立した司法でなく、政権与党多数の意向に即した判決をする。

 

 

読書記録100(2020年33冊目)  日本人の法意識 川島武宣 著 岩波新書 2020/06/17

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本書を読むと、大日本帝国憲法下では、なんと、裁判官は、官吏無責任の原則を宣言している。

中曽根は、日本国憲法へ変わった敗戦後の日本でも、日本国憲法は義務が、納税、勤労、教育を受けさせる義務の3つしかない、と口をこぼしていることが本書で知った。

日本人は、裁判で黒白決着つける方法を好まず、「和」の精神で以て、調停を好む傾向にあることも本書で判明した。ということは「和」と「法」は対立することにならないだろうか。「和」といっても、結局は、力の弱いものが力の強いものに従わざるを得ない見かけ上の争いのない状態を「和」と言っているにすぎず、それは、抑圧の謂でしかない。

だが、現代は、セクハラやパワハラ、未払い残業代などで、民事訴訟が増えてきて、「和」という嘘に日本人はもうだまされなくなってきたようだ。「和」はもう必要がない。必要な精神は「法」である。

 

 

日本人の法意識 (岩波新書)

日本人の法意識 (岩波新書)

 

 

読書記録99(2020年32冊目)  総合英語 be 平賀正子 監修  鈴木希明 編著 2020/06/13

 

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語学書で他国語を学ぶのは苦痛以外何物でもない。

その苦痛を通じて、せめてもの、英語でさえも身に着けたいと考え、挑戦した。

一体、読み終えるのに、どのくらいの時間がかかったのか。

また、読んでみることにする。

 

総合英語be

総合英語be

 

 

 

 

読書記録 2020年5月

5月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:2069
ナイス数:10

歴史を考えるヒント (新潮文庫)歴史を考えるヒント (新潮文庫)感想
日本という国名が初めて使われたのは浄御原令が発布された689年である。 つまり、689年以前は、倭というのが国名だったのである。 だから、574年生まれの厩戸皇子は日本人ではなく倭人である。 日本という国がまるで縄文時代からあるかのように錯覚してしまう現代日本人であるが、日本という国名が初めて使われたのは689年である。 日本史に対する思い込みが融解し、多様な日本を発見するための入門編的な本である。
読了日:05月26日 著者:網野 善彦
近代日本思想案内 (岩波文庫 (別冊14))近代日本思想案内 (岩波文庫 (別冊14))感想
北一輝が、幸徳秋水よりも激しく国体を批判していたことも知った。 また、西洋哲学のほとんどの日本語訳語を完成させた哲学者である西周は、日本人は神武天皇以来、奴隷根性が染みついていると指摘していたことも本書で初めて知った事実である。
読了日:05月21日 著者:鹿野 政直
国策不捜査 「森友事件」の全貌国策不捜査 「森友事件」の全貌感想
籠池氏は、生長の家の思想的影響もあり、純朴な気持ちで、国のために国を支えるためことが国を愛すると考え、幼児教育に力を、と考えていた籠池氏は、安倍夫妻の裏切り、松井一郎の陥れ、東京地検特捜部の強制的な拘置所への勾留、拘留中の息子佳茂の使い込みなど、その過程で籠池氏は日本保守政治と人質司法についての問題点を獄中で掴み、成長していく。謙虚な人は成長し、変わるのだ。
読了日:05月21日 著者:籠池 泰典,赤澤 竜也
人間の条件 (ちくま学芸文庫)人間の条件 (ちくま学芸文庫)感想
本書は、ハイデガーヤスパースから薫陶を受けたハンナ・アレントが、古代ギリシア哲学、マルクス、カント、ロック、デカルト、などなの思想家やガリレオ・ガリレイのような科学者などの文献を読み込み、その読み込みから、現代文明を「観照」し、分析し、我々人類が向かうべき方向を1958年に指し示したハンナ・アレントの代表作である。
読了日:05月18日 著者:ハンナ アレント
原始仏典 (ちくま学芸文庫)原始仏典 (ちくま学芸文庫)感想
大乗仏教が成立するはるか以前の釈尊が説いた教えについてを読者へ教えるという本である。同時に、古代インドの物語についての紹介説明もある。古代インドの荒唐無稽な物語を知り、インド映画の荒唐無稽さが納得できた。本書を読み、初めて知ったが、出家するには、出家しても家族が困らないようにするという定めが古代インドにはあり、ゆえに、釈尊は王家だから、出家できたのだ。 釈尊が教えを説きまわった時代は、カースト制を侵食するような貨幣経済の浸透、諸国の乱立が背景としてあった。釈尊は、ジャイナ教を模倣しつつ脱構築したのである。
読了日:05月18日 著者:中村 元

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